模倣と影響
今回は映像作品における模倣と影響ということを考えていく。
「戦車」をテーマとして扱う。
戦車とは、元々は馬で引くものだった。
タロットカードの戦車(チャリオット)である。
意味は、「前進する、成功、行動範囲が広がる、克服する」といったこと。
前に進むという運動を象徴している。
映画などの映像作品において、古典的な作品は必ず模倣される。
後の作品に影響を与えると言ってもいい。
まずは、映画史においても超重要な古典「ベン・ハー」の戦車競走のシーンを観てみよう。
古い作品なので少しテンポが悪く感じられるかもしれないが、全画面にして観てほしい。
いかにこの作品が後に影響を与えているかがわかる。
タロットカードのチャリオットと同じ2頭立ての戦車を使っている。
「キングダム」を知っている人は似た形の戦車を知っていると思う。
なんと製作は1959年。
これが映画で一番有名な戦車のシーンである。
これが2000年の『グラディエーター』になると戦車のシーンはこうなる。
主人公はローマの将軍であったが剣闘士に身を落としている。
剣闘士の試合だと思っていたら、いきなり戦車が登場して焦るというシーン。
たまに映る皇帝はコンモドゥス。実在の皇帝である。
この映画の序盤で死ぬのはマルクス=アウレリウス=アントニヌス。五賢帝最後の皇帝である。世界史を選択した人は知っていると思う。
このシーンはモロに『ベン・ハー』の影響を受けていることがわかると思う。
2000年ということでCGなどを使えるようになっているのでより迫力のある映像になっている。
この『グラディエーター』の影響を受けて作られたのがこのペプシのCM
ブリトニー・スピアーズ、ビヨンセ、ピンクといったスターを起用して話題になった。
さて、戦車は馬が引くものから、第一次世界大戦において今みんなが想像する戦車の形になった。
こちらは2014年の映画『フューリー』
敵の戦車ティガーは日本ではタイガー1と呼ばれたドイツの化物級の戦車である。
この頃の戦車になると、キャタピラなので後退や方向転換が容易となる。
何が決定的かというと、大砲の射程距離、装甲の厚さなどに変わってくる。
ティーガーは1台しかいないが、アメリカ軍のM4シャーマンとの圧倒的な差があるため、ボコボコにされるのである。
そして、2015年の『マッドマックス 怒りのデスロード』では、構図自体が『ベン・ハー』と酷似している。
左が『ベン・ハー』右が『マッドマックス』
(リンクをクリックして画像を開いてください)
Ben-Hur / William Wyler
— K.E.A (@Stargazer_KEA) 2020年8月7日
Mad Max: Fury Road / George Miller pic.twitter.com/gczA6c51UH
最後に、近未来を描いた『攻殻機動隊スタンドアローンコンプレックス』
戦車はAIを搭載して自分で考えられるようになっている。
戦車の天敵はヘリコプター。
ティーガーの時代には無かったが、今の戦車は空中からヘリに狙われやすいという欠点がある。
このように映像作品は過去のものからの影響をうけている。
単なる真似・パクリではなく、後の作品に影響を与えられるのがいい作品だということを理解してほしい。
(もっと学びたい人は取り上げた作品を観てみよう。『グラディエーター』『フューリー』『マッドマックス 怒りのデスロード』が観やすい。)
以上。